8月に発生した令和6年台風10号は、大きな勢力で神奈川に到達しました。県の発表(9月2日時点)によると、この台風による被害は、人的被害5件(軽症)、建物被害は全壊1棟、一部破損4棟、床上浸水29棟、床下浸水38棟となっています。今回、交通の要所である善波トンネルが土砂崩れで通行止めになるなど、大きな被害を受けた伊勢原市。市内で工務店を営み、地域の復旧にもあたった湘央建設組合の川戸さんから手記が寄せられました。
自宅近くの道路が、アンダーパスのように水が溜まってしまいました。危険だと思い消防署に連絡をすると「警察の仕事です」と言われ、警察に連絡をすると「人員がいないので消防に連絡してくれ」と言われました。近隣の工務店と緊急対策としてゲートを立てて、通行止めの交通整理を行ないました。
大規模災害では行政は機能しないかもしれません。やはり有事の際は近隣住民での協力が不可欠で、私たち工務店、建築従事者が先頭に立ち迅速な復旧復興が必須です。
報道はされていませんが小規模な災害は点在しており、善波トンネル付近の農家では、道が塞がれたり、畑の法面が崩れて物置を潰してしまうなどの被害も確認されています。復旧は農家の自己負担です。
お盆の秦野市震源の直下型地震により、施主様の屋根瓦が崩れ落ちる被害がありました。被害が広域だったため、瓦職人が足らず、修繕が追いつく前に今回の台風が起こりました。私はブルーシートが飛ばないよう、事前に土嚢を積み被害に備えました。施主様には「川戸さんのお陰で安心して過ごせた」と言って頂けました。
他にも、通常では起こらないような雨漏りの対応に追われました。ただ、これまでに雨漏り調査や瓦の修繕、棟を積み替えていたお宅、板金に葺き替えたお宅は何の被害もありませんでした。
建物災害のほとんどは事前の準備ができていれば軽減できます。そのためには市町村の耐震補強や住宅の防災対策への補助金の拡充が必要です。事前の対策を行政が行なうよう、私たちからの働きかけが重要になってくると思います。