担い手3法改正によって、建設業では具体的に何が変わるのか、全建総連長谷部賃金対策部長による解説を連載します。
資材価格高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止では、受発注者間の請負代金変更協議の円滑化に向け、契約前後のルールが整備されました。契約前のルールは、資材高騰など請負代金に影響を及ぼすリスク情報の注文者への提供を受注者に義務付けます。また、資材高騰に伴う請負代金などの変更方法を契約書の法定記載事項として明確化します。
契約後のルールは、資材価格高騰が顕在化し、受注者が請負代金などの変更方法に従って契約変更の協議を申し出た際、誠実に協議に応じる努力義務を注文者に課します。入契法では、誠実に協議に応じることを公共発注者の義務にします。
著しく短い工期の禁止 建設業者へ広げる
働き方改革等に向けては、現行法で注文者を対象にしている「著しく短い工期の禁止」を建設業者に広げ、工期ダンピングを防ぎ、資材入手に関するリスク情報を注文者へ契約前に通知することを受注者に義務付けます。また、ICT(情報通信技術)活用による現場管理の指針を作成するとともに、建設業法で特定建設業者、入契法で公共工事受注者に対して指針に沿った効率的な現場管理の実施を努力義務化します。入契法では、公共発注者への施工体制台帳の提出義務を合理化し、ICTの活用によって施工体制を確認できれば、施工体制台帳の提出が不要となります。
労働者の処遇が明文化 歴史的な到達
労働者の処遇確保を建設業者に努力義務化し、中建審が「労務費の基準(標準労務費)」を作成・勧告します。著しく低い労務費や工期による見積りや見積り依頼の禁止、原価割れ契約の禁止を受発注者の双方に導入することで、適切な労務費等の確保や賃金行き渡りを担保していきます。
公共・民間いずれにも適用され、下請契約も含めて対象となり、新しい取引のルールが導入されることになります。仕組みとしては、全建総連が運動を進めている「公契約法・条例」と同様の考え方が示されています。
発注者保護を主な目的として制定された建設業法に、「公正な評価に基づく適正な賃金の支払」「労働者の適切な処遇を確保」が明文化されたことは、建設業法の体系の中で労働政策・社会政策等の実現が図られることとなり、建設労働運動にとって歴史的に大きな到達です。100万人国会請願署名の成果を含め、これまでの全建総連、各地域組合の政策・制度要求運動、公契約法・条例制定運動、そして現場で働く仲間の要求運動の具体化・成果と言えます。
CCUSが処遇改善の鍵 さらなる普及促進を
特に「労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価」については、全建総連が不退転の決意で取り組んでいる建設キャリアアップシステムを指すものであり、CCUSを技能者の処遇改善と結合させるための方向性が示されました。改めて、町場・住宅現場を含む全現場での普及促進、就業履歴の環境整備、レベル判定の推進等が必要です。