近年、アスベストが原因とされる疾患に罹患する建設作業従事者が増加しています。
建設作業従事者のほとんどがアスベスト粉じんにばく露していると言っても過言ではありません。アスベストばく露の特徴的所見である胸膜肥厚(胸膜プラーク)の出現率は胸部X線写真で神建連組合員の7%に及んでいます。こうした状況の中で、肺がんや悪性中皮腫などの重篤な疾患が発生しています。また、石綿肺など肺機能の低下によって日常生活にも不自由する者も発生しています。
アスベストが原因となる労災認定件数は毎年1,000件を超え、半数以上が建設作業従事者となっています。さらに、2040年がピークとも言われるアスベスト建材を使用した解体工事が増加する中で、過去の被害だけではなく新たな被害者も増加することが懸念されています。
建設作業従事者は多くが零細・小規模事業所に勤務しているか、あるいは建設産業独特の一人親方という就労形態で仕事をしています。そのため、アスベストが原因の疾患にかかると、圧倒的多数の者が仕事を続けることが出来なくなり、収入の道が閉ざされ生活困窮に陥るのが現状です。
建設従事者がアスベストのばく露による疾患を発症した場合は、労災認定基準にもとづいて速やかに救済がはかられることが最善の方策と考えています。
その中で重要となっているのが、医師による職歴の把握と胸膜肥厚班所見の発見などアスベスト疾患を疑う視点です。
このたび神建連と建設国保組合は、主に医師・医療機関向けに、建設従事者の状況やこの間のアスベスト関連疾患の労災認定事例などを取りまとめた、小冊子を作成しました。
多くの医師・医療関係者や建設作業従事者にご一読いただき、すべてのアスベスト被害者の早期救済につながることをめざしています。