深刻な人材不足
大手の責任で処遇改善を
「建設産業の再生と発展のための方策」が国や業界を挙げて推進されて5年が経過しました。この間、国は①建設産業の長年の働き方の劣化により、若年技能労働者の新規入職の激減、②大量の離職者が生じており、「将来に向けたインフラ整備の担い手が消滅する危機的状態」という認識を示した上で、2年連続にわたって「方策」を示しました。
その過程で、担い手3法と言われる「公共工事品質確保法」「入札契約適正化法」「建設業法」法改正も行いました。激しい受注競争により「原価割れ受注(ダンピング受注)」が公共工事でもまん延し、元請けから1次、2次への請負単価の減少は労働者の賃金を大きく引き下げ、1か月に25日以上働いても、年収300万円代の仲間も少なくない状況が生まれました。
雇用破壊の過程では、「一人親方になったら稼げる」という幻想がふりまかれ、すべて自己責任となる偽装請負の世界が異常に拡大しました。「一人親方」の法律的な定義はありませんが、厚労省では、「労働者を雇用せずに自分自身で事業を行う事業主のこと。元々は職人をまとめて仕事ができる能力をもっているという熟練職階を示す」とされています。
高校を卒業し、建設業に入職して1年未満の見習工が1日8000円の日給をもらいながら「あなたは当社では請負契約ですから」と、厚生年金や雇用保険の加入手続きもされないまま「外注扱い」となるような働き方が許されるのでしょうか。
このような劣化した雇用環境を大手ゼネコンや住宅企業は、最大限利用しながら、不当な利益を確保してきたのです。長年にわたって労働者をモノ扱いしてきた建設業は、若年者の入職が激減、極めて深刻な人材不足が生じており、必要な工事の発注もできなくなる事例が生まれています。
その解決のための唯一の手立ては、労働者の適正な技能評価とその水準に相応しい業界の相場賃金を形成し、技能と賃金の社会的評価を明確にルール化することです。20代で年収400万円、40代で年収600万円(日建連の目標賃金)は実現できる目標です。
建設キャリアアップシステムの構築で、業界と、労働組合が「技能労働者の育成・確保」について、社会的合意を実現していくことが大きな課題となる時代です。